どうも、ゴトーだ。
俺は三度の飯よりニコニコ動画が好きでな。
もっとも好きではあるが、最近のニコニコの運営には疑問符がつくことが多い。
先日投稿したニコニコ動画のゲーム実況の現状についての記事に対する反響が予想以上に大きかった。
割りと旬は過ぎているが、今回は8月に起きた「1.5GB問題」について紹介したい。
ニコニコ動画のアップロード仕様変更
実はこの記事を書いている時点から3ヶ月前の2016年8月にちょっとした騒動になったことなのだが、おそらくニコニコ動画を頻繁に利用しているユーザー以外にはあまり良く知られていないと思うので、ニコニコ動画は知ってるけど、今どんな感じになっているのか知らない人向けに書いていきたい。
事の発端は2016年8月18日。
ユーザーIDが1~140万番のプレミアムユーザー限定で、投稿できる動画容量の上限が1.5GBまで引き上げられた。
これはどういうことかというと、動画というのは基本的に高画質であればあるほど容量が大きくなる性質にある。
なぜかというと動画は圧縮という処理をしないと非常に大きなサイズのファイルになってしまうので、圧縮することでインターネット経由でも快適に見られる程度のサイズになるのだが、圧縮しすぎると画質は劣化してしまう。
これまでのニコニコの動画の容量上限は100MBだったため、約15倍まで上限が緩和されたということで、これまでにない高画質な動画が楽しめるぞ!と一瞬沸き踊った。
しかしこれは間違いで、単純に”投稿できる上限が増えた”だけで、画質は向上どころか、低下したものすら多く見られた。
さらに驚くべきことに、この新しい仕様によってフルHDの動画が投稿できなくなったのだ。
YouTubeを始めとした各種動画サービスは随分と前からフルHDに対応していたし、ニコニコでも旧仕様なら短時間動画はフルHDにできたのだが、それもできなくなった。
ちょっと耳を疑うような出来事だが、これはどういうことか解説していきたい。
歓喜から一転、落胆へ
当初この仕様が発表された時、動画投稿者もユーザーも「ついにニコニコも世界基準の動画サービスになる」と胸を躍らせた。
実際にこのような動画が企画されて投稿されている。(参考動画なので、見る必要はないよ)
これはゲーム実況者同士の企画で、「マリオカートの成績によって上位の人は高容量の動画をあげられるけど、下位になるほどだんだん低容量になる」という趣旨で行われたもので、下位のやつは低画質m9(^Д^)プギャーみたいなノリだったのだが、いざ投稿されてみると様子がおかしいことに気づく。
というのもこの企画で上位の投稿者も下位の投稿者もこれといって画質の違いはなく、「新仕様は本当に画質向上しているのか?」という空気が一部出てくる。
誤解を招かないように説明しておくと、この企画が発端となったわけではなく、当時上限が緩和された時に誰もが高画質になるものだと思いこんでいたことを象徴する動画として挙げさせてもらった。
当初はニコニコが公式にアップロード仕様を掲載していたわけではないので、有志の投稿者らが検証した結果、どうやら1.5GBへの緩和は、単に1.5GBにまで投稿できる容量が増えるだけで、必ずしも高画質になるわけではないことが明らかになる。
これについて少し詳しく説明したい。
強制再エンコード問題
まずこれを説明するにあたり、一つ抑えていかないといけないものとして「エンコード」という言葉がある。
これは要は動画を圧縮して容量を小さくするための作業なのだが、先程も言ったように圧縮することで動画は劣化してしまうので低画質になる。
またエンコードは何度もかけることができて、一度エンコードしたものを更に圧縮するために「再エンコード」をかけることがある。
これまでのニコニコ動画では、従来の上限である100MB以内にあらかじめエンコードして、規定のファイル形式にしておけば、ニコニコ側で再エンコードがかからず、手元にある動画から劣化せずにそのまま視聴者に届けることが出来た。
しかし、1.5GBに上限が緩和されると、なんとこれまで再エンコードがかからなかった動画ですら、強制的にニコニコ側でエンコードされてしまうので、従来のやり方で投稿するとかえって低画質になるという問題が発覚したのだ。
さらに動画の解像度の上限も「1280×720」というHDまでとなり、フルHDに未対応という鬼仕様になってしまった。
今やスマホでもフルHDの解像度のものは珍しくもないというのに、時代に逆行しているという声が多く聞かれたのは言うまでもない。
必ずしも低画質になったわけではない
この記事は動画投稿者向けに書いているわけではないので、あまりテクニカルな話をしても仕方ないと思うが、これだけ書くとネガティブ要素しかないと捉えられかねないので補足。
まず結論から言うと、新仕様に合わせれば結果的に高画質になることもあるし、低画質になることもある。
少なくとも従来通りにやると低画質化したということで、総じて見ると画質の水準はさほど変わっていないらしい。
とはいえ15分以上の動画はHDすら非対応になったり、いくら短時間動画でもフルHDに非対応になったりと、色々と脇の甘い仕様になっていて、投稿者のニーズを捉えられなくなったと言われている。
エコノミー回避が不能に
これまでの内容をまとめると、「新仕様によって画質が良くなったわけではないけど、まあ上手くやれば悪くなったわけじゃないよね」という具合なのだが、一つ絶対的にマイナスポイントがあり、それは「エコノミー回避」というものだ。
エコノミー画質というのは、プレミアム会員でない一般会員は「平日の18時~26時」「土・日・祝の12時~26時」に低画質モードとなる鬼のような仕様だ。
ただ、従来の仕様では一定の条件をみたすことで、このエコノミー画質を回避することができたのだが、何と新仕様になってエコノミーを回避することができなくなった。
つまり一般会員にとってはよく見られる時間帯において高画質の動画を見ることは不可能になり、仕様変更前よりサービスの質が落ちたことになる。
そもそもエコノミーという仕様自体、ニコニコ以外に見られないものなのに、それを強制するような仕様変更になったのは頂けない。
YouTubeの仕様は?
最大手サービスであるYouTubeと比較してみよう。
まずYouTubeでは投稿できる動画時間の長さはデフォルトでは15分だが、制限を解除することで最長11時間まで伸ばすことができる。
そして容量については何と128GBのものまで投稿できる。
ニコニコ動画では1.5GB以内かつ綺麗な画質に保ち、HDにするには15分以内に収めないといけないという制限があるのに対して、YouTubeは投稿者にかなり優しい仕様になっている。
そして画質はフルHDはもちろん、4k画質にまで対応している。
ついでに言うと360度のVR動画にすら対応している。
VR対応までやってくれとはいわないが、国内の生配信サービスですらHD対応は当然のこと、一部はフルHD配信に対応しているのに、未だに動画でフルHD非対応というのはユーザーからすると不満に感じざるを得ない。
アニメ配信も15分以上の動画になることで、HDにも対応していないのはちょっとキツイ。
なぜこのような仕様にしたのか
ここで一つ疑問に思うのが、なぜこのような仕様にしたのかということだ。
それに関してドワンゴのエンジニアが以下のように語っている。
サーバ側で再エンコがかかる点については、様々なご意見もあるかと思いますが、脱Flash時代を迎えるに当たって今後の展開のために必要なことだったとご理解いただければと思います。今後は100MB制限を気にせず手元にある綺麗な映像ソースをそのまま投稿していただければと思います。
— Toshihiro Shimizu (@meso) 2016年8月19日
「脱Flash時代を迎えるに当たって今後の展開のために必要なことだった」ということだが、正直どういうことか全く分からない。
この他に公式を含めて言及されたものはない。
追記:
ブコメの指摘によるとflvファイルがHTML5では非対応なので、既存のflvファイルをニコニコ側でエンコードする必要があるとのこと。
どういうことかというと、ニコニコではこれまでflvかmp4という形式の動画が再生されていたのだが、HTML5ではflv形式が非対応となり、これまでFlashで再生されていたflv動画をHTML5で再生できるようにするには、ニコニコ側で一旦エンコードをしなければならないということらしい。
カドカワ公式サイトのヒントが?
他にも何かヒントはないかと探していたら、カドカワの企業サイトにこのようなメッセージがあった。
Webサービス事業においては、niconicoに続くサービスとして、スマホ向け新サービスの開始を予定しています。
また、niconicoを大規模にリニューアルし、高画質化や回線サーバーの大幅増強を行うことで、サービスの向上、現在の優位性を今後も持続できるよう、機能強化を図ってまいります。
なんか適当に探していたら、物凄いモノを発見したような気がする。
「niconicoに続くサービスとして、スマホ向け新サービスの開始」と何気なく書いてあるが、今までこれが言及されていることはなかったので、もしかしたら新発見かもしれない。
そして「高画質・回線の大幅強化」は行うと明言していることがわかった。
しかし、この1.5GBへの新仕様が高画質化だとしたら全くもって実現されていないことになるが大丈夫なのだろうか。
動画容量以外の改革
ちなみにニコニコは今回取り上げた「1.5GBの新仕様」以外にも今年に入って色々な改革に取り組んでいるので紹介したい。
HTML5プレイヤー
現在Webブラウザ最大手のGoogle Chromeが2016年12月からFlash対応を打ち切って、HTML5のみに対応すると発表している。
YouTubeは2011年からHTML5に対応していたのだが、ニコニコ動画は2016年10月27日からようやくHTML5プレイヤーを一部ユーザーに開放している。
Firefoxも2017年にはFlashを無効化するとしていて、ニコニコはかなり駆け足でHTML5化したことになる。
HTML5対応したことで、動画プレイヤーが格段に軽くなり、またHTML5とは関係ないが、動画ページのデザインが洗練されたりと、これに関してはポジティブに評価したい。
もっとも駆け足で行ったせいかバグが多く、自分の場合、動画を視聴中に頻繁に再生できなくなるバグが起こる。
ニコ生のサービス向上【新配信(β)】
実はニコニコ動画よりもニコニコ生放送の方が競合に食われていて、今ではツイキャスのほうがすっかりメジャーな配信サービスになってしまった。
唯一競争率を持っているゲーム実況でもOPENRECやTwitchに食われ始めていて、特に画質の問題をなんとかしないとまずいぞ、ということに対応したのがこの「新配信β」という仕様だ。
これについては以下の記事で詳しく解説しているのだが、これは要するに「今までの酷すぎるサービスをちょっと改善したはいいけど、まだ競合サービスに全然追いついていない」という内容になっている。
具体的にいうとこれまで画質を決める要因になる「ビットレート」というものが、競合サービスの1/8くらいしかなかったものが、2/5くらいになったりしている。
その他ニコ生特有のヘンテコな仕様が少し改善されているが、競合優位性には至っていない。
なぜここまで対応が遅れたのか
このようにニコニコは動画投稿、動画プレイヤー、生配信と全方位で改革を進めているのだが、多くが見当ハズレだったり内容が物足りなくて、競合に食われている現状を変えられる気はしない。
なぜここまで対応が遅れてしまっているのか、ということだが…俺のない頭を捻っても結論は出なかった。
ドワンゴに技術力がないのか、マネジメントが上手く行っていないのか、サーバーを増強するスペースが無いのか、単に金がないのか…とあれこれ考えるが部外者である俺からすれば単なる憶測の域を出ない。
ポジティブな要因としては、先程言及した「niconicoに続くスマホ向け新サービス」にリソースを割いているのかもしれない。
最近まで赤字経営だったから金がないんでしょう