WBCの公式球(ボール)について。日本とメジャーのボールの違いについて紹介。

どうも、ゴトーだ。

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俺は三度の飯より野球が好きでな。
もちろんプロ野球もWBCもメジャーも全て楽しみにしている。

さて今回はWBCになるといつも話題になる、プロ野球とWBC・メジャーのボールの違いについて説明していきたい。
これまでのプロ野球でのボールにまつわる騒動も合わせて紹介している。

プロ野球と、WBC、メジャーのボールの違い

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WBCが近づくと毎回恒例となっているのが、「ボールの違いで思うように投げられない」という話題だ。
投手にとっては球がすっぽ抜けたり、思うように変化しなければ命取りとなるし、野手にとっても狙った所に送球ができなくなるリスクがある。

ではなぜこのような事が起こるのかというと、日本のプロ野球が使っているボールとWBCで使っているボールが違うからだ。
逆にメジャーの選手がボールへの対応に困るという話題にならないのは、WBCのボールとメジャーのボールは同じものになっているためでもある。

WBC公式球は国際球ではない

野球世界一を決める国別対抗戦であるWBCは中立的な大会に思われがちだが、実際にはMLBが主催しているので、その事情からボールもMLBのものと同じものが使われている。

むしろ国際組織である世界野球ソフトボール連盟の公認球は、日本のメーカーであるミズノが配給しており、そのボールはプロ野球の統一球と同じものになっている。
2015年に開催されたプレミア12では主催が世界野球ソフトボール連盟なので、そこで使われたボールもプロ野球の統一球だった。

そのため国際大会でもWBCの時だけボールの違いが話題になってしまうという事情がある。

日本とメジャーのボールの主な違い

それぞれのボールについて詳しくは後ほど解説していくが、二つのボールの違いについて簡単に比較したのがこちら。

サイズ 重さ 縫い目
日本 約22.9cm 約141.7g 低い
メジャー 約23.5cm 約148.8g 高い

まず目につくのがサイズの違いだが、実は公認野球規則ではサイズと重さは一定の幅が設けられている。
その規則では、大きさは円周22.9cm〜23.5cm、重さは141.7g〜148.8gに収まれば良い。

日本では規定数値の下限をもとに作られるのに対して、メジャーでは数値の上限で製造されているので、メジャーのボールの方が大きくなっている。
縫い目に関しても、プロ野球のほうが若干低く、また小さくなっているので、それが原因で変化球の曲がり方も変わってくる。

また日本のボールは表面の革がしっとりとしているのに対して、メジャーの革はツルツルしていて滑りやすいという違いがあり、これがすっぽ抜けを生みやすくしていると言われている。

プロ野球のボールの歴史

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プロ野球のボールは2010年以降にかなり紆余曲折を経て現在に至っているので、その経緯を紹介しよう。

2010年以前

現在のプロ野球のボールは一社(ミズノ)が同じ形式で製造したものになっているが、2010年まではミズノ、ゼット、アシックス、久保田運動具店、那須スポーツ、SSK、松勘工業という7社が異なる材質や製法で作ったボールが混在しており、球団が独自にどのボールを使用するかを選べる状態だった。

また2001年頃のミズノのボールが極端に飛びやすいと言われており、それはホームランの数を見ても良く分かるものとなっている。

年度 本塁打数
2001年 1802本
2002年 1695本
2003年 1987本
2004年 1994本
2005年 1747本
2006年 1453本
2007年 1460本
2008年 1480本
2009年 1534本
2010年 1605本
2011年 939本

2001年にはローズがシーズン55本塁打、2002年にはカブレラが同じく55本塁打を打っていたのが象徴的な出来事で、日本人選手でも中村紀洋らはシーズン40本塁打以上打つことも珍しくなかった。
また2003年に横浜ベイスターズがミズノ製のボールに切り替えたところ、本塁打が95本も増えたというデータがある。

このボールは2005年に見直されたことで、2006年からやや本塁打の数は落ちているが、依然として高い水準だった。

[参考サイト: 日本プロ野球2001-2013年 ボールの”飛びやすさ”の変遷まとめ – Yahoo!知恵袋]

2011年以降の統一球

2010年まで球場ごとに異なるボールが使われていたことや、WBCなどの国際試合で使われるボールに比べると飛びやすいという指摘があったことで、2011年からはボールの配給がミズノ一社となり、また反発係数を下げることでボールが飛びにくくなることになった。
(反発係数が低いほど跳ね返りづらいので、ボールの飛距離が下がることになる)

上の表を見れば一目瞭然だが、2010年には1605本だった本塁打数が、統一球になった2011年には939本にまで落ち込んでいる。
さらに翌年には881本にさらに落ち込むなど、かつてない投高打低の時代に突入する。

ただしMLBとの親善試合を行われると、日米双方のボールを打った選手が「日本のボールのほうがメジャーよりも飛ばない」と訴えたことで、選手会側が統一球を検証する要求を出している。
その後、実は統一球は基準値を下回る反発係数であったことが分かり、この時のボールを「違反球」と呼ばれることがある。

NPBは以前から反発係数が基準以下になっていたことを知っており、さらに2013年からはミズノに基準値を下回らないように要請しており、それに伴いホームランが出やすくなっていたが、それもしばらくは公表せず、隠蔽していたことも問題となった。

ちなみにホームランが出やすくなった2013年にバレンティンがプロ野球記録となるシーズン60本塁打を記録している。

2014年以降の統一球

これまでの統一球の反発係数の基準値は「0.4134~0.4374」だったが、それよりやや下げて「0.4034~0.4234」としている。
しかしシーズン中の抜き取り検査の結果、反発係数の平均が基準値よりも高くなっていたことが分かり、さらには基準値の幅が狭くて違反になる球が多すぎるとの批判も生じた。

2015年からは基準値が目標値に変わり、現在に至るまで反発係数の上下限はなくなっている。

ちなみにもともとの統一球の趣旨の一つである「WBCの球に近づける」は全く達成されておらず、統一球を巡るゴタゴタはプロ野球の評判を落とすものとなってしまった。

メジャーリーグのボール

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メジャーリーグのボールは1977年から現在までアメリカのローリングス社が独占的に配給していて、コスタリカにある工場で精算されている。
先ほども紹介したように、公認野球規則の上限サイズで作られているため、プロ野球のボールと比べると、やや大きく重たくなっている。

滑りやすさ

WBCの時期になると、毎回のようにボールが滑るという選手の声が報じられる。
ボールの表面は日米どちらも牛革で作られているが、材質や工法の問題から、メジャーのボールはツルツルしていて滑りやすくなっている。

また新品のボールの滑りを減らすために、試合前に審判がボールに砂を塗り込むのだが、メジャーの「デラウェア川の川砂」は粒子がきめ細かく、泥のようになっていて、塗り方によっては滑りやすくなると言われている。(WBCではその川砂が使われるのかは調べても分からなかったが…)

変化の違い

プロ野球とメジャーのボールだと、同じ握り、同じ投げ方でも変化に違いが出てくる。

ツーシームがメジャーの方がよく曲がると言われているのは、ローリングス社のボールは一つ一つのバラつきが大きく、重心が中央からずれていること、また縫い目が高く、均一ではないことが要因だと言われている。
そのためWBCの球を使うと、普段想定している曲がり方にならないということが発生する。

ツーシームは曲がりやすいが、曲がりにくいボールもあり、2009年の第2回大会では、岸孝之が得意としていたカーブが思うように曲がらないことを理由に落選している。

反発係数

プロ野球では統一球時代に散々と話題になった「反発係数」だが、メジャーでも一定のルールに従って反発係数が調べられる。
日本語情報を探しても見当たらず、アメリカの文献にその調べ方が書かれているとの情報を入手したので調べてみた。

After they arrive at a central warehouse, approximately 28 out of every 10,000 balls are run through tests. The balls are shot out of a pitching machine at 85 feet per second into a board of northern white ash (the same as used in the majority of bats), with its speed coming off the board measured to determine its coefficient of restitution. Balls must have a coefficient of restitution between .514 and .578, meaning that they must rebound at between 43.69 and 49.13 feet per second to meet standards.

(出典: http://deadspin.com/5937432/was-mlbs-juiced-era-actually-a-juiced-ball-era)

ここの箇所だけ和訳しても分かりづらくなってしまうので、文章の流れを踏まえた上での解釈はこのようになる。

バットの素材と同じホワイトアッシュという木材でできた板に、ピッチングマシーンで秒速85フィート(時速約93キロ)で発射する。
この時、跳ね返ってくるボールの速度が51.4%〜57.8%、すなわち時速約48キロ〜54キロになっていれば合格になる。
このテストによって10000球のうち約28球が弾かれるとのこと。

ちなみに日本基準の反発係数を調べたが、いくつかのデータが錯綜していて、あまり信憑性がなかったので取り上げないことにする。

まとめ

日本では安定感のある投手でも、WBCではボールに馴染めずに苦戦することはおそらく今後出てくるはずだ。
2016年シーズン終了後の親善試合でも、ボールの違いから投手陣が崩れたのも記憶に新しい。

WBC本大会ではボールの違いを踏まえてみると、また違った視点から見えてくるかもしれない。

1 個のコメント

  • 英文資料の”run through test”はテストに回されると言う意味では?、つまり1万個の球から28個がサンプル的にピックアップされ、それがテストされるという意味でないかと思います

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