井上尚弥の「怪物」たる経歴を紹介。待望されるロマゴン戦についても解説。

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どうも、ゴトーだ。

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俺は三度の飯よりボクシングが好きでな。
WOWOWを契約していた頃は毎週エキサイトマッチを録画しては寝る前に見ていたものだ。

今回初めてボクシング選手を紹介するが、初回は井上尚弥に選ばせてもらった。
「モンスター」と呼ばれ、同じ階級では対戦相手から逃げられてしまうこともある、日本人離れしたボクサーだ。

井上尚弥とは

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現在の日本ボクシングにおける2大スター選手といえば井上尚弥と井岡一翔だ。

この二人は非常に共通点が多い。
身長や体重もほぼ同じだし、親子鷹でボクシングをしてきたこと、アマチュアのエリートであること、テレビ局に推されて有名になったことなどがあげられる。

二人のボクサーとしての特徴を簡単に表すと、井岡一翔が隙のない完成度の高いボクサーであるなら、井上尚弥は底知れない強さを持った怪物ボクサーだ。
どちらも違った魅力があり、井岡は唸らせるようなテクニックがあるが、井上は愛称である「怪物」の名に違わぬ、衝撃的なKOを生み出してきた。

そんな井上の実績としては、高校時代のアマチュアボクシングでは前人未到の7冠。
プロでも当時史上最速の6戦目での世界王者、さらに8戦目での二階級制覇は国内最速となっている。

日本ボクシングの常識をことごとく打ち破る怪物ボクサー、井上尚弥の魅力について紹介していきたい。

生年月日 1993年4月10日 (歳)
身長 162cm
体重 52kg(試合時)
階級 スーパーフライ級
ニックネーム Monster(怪物)

ゴトー's Eye

井上は日本のボクシング史を塗り替える衝撃的な勝ち方をしてきた。
しかし拳の怪我を慢性的に抱えていて、実力を十分に発揮できないことも多い。

怪物度 ★★★★★
パンチ力 ★★★★★
スピード ★★★★★
安定感 ★★☆☆☆
スター性 ★★★★☆

井上のボクシングキャリア

アマチュア時代

井上は幼少期からボクシングを始めていて、父親の井上真吾がその時から現在に至るまでトレーナーを勤めている。

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一目で印象に残る怖そうな風貌のオジサンが井上真吾で、最近では名物親父としてメディアに出演したり本も執筆している。
親子ボクサーというと亀田親子を思い出すが、こっちの親父は昔はヤンチャだったものの、今ではナイスガイだ。

この親父はボクシング経験自体はあるが試合したことはないらしく、ホントにそんな親父が指導できるのか、と思われたりもしたが、どうやらその腕は本物らしい。
所属している大橋ジムの会長もこの親父は凄腕トレーナーだと息を巻いている。

まあテレビに出るときには、坂道で車を押したりといった某亀田親子みたいなちょっと胡散臭いトレーニングをしているが、まあ本物ではあるんだろう。

そしてこの親父の凄いところは塗装業を営んでいたのだが、井上尚弥と弟の拓真がボクシングを始めると、子供たちの練習のためにボクシングジムの経営まで始めてしまうことだ。
それ以来、親子二人三脚で練習をしていると、いつしかとんでもないボクサーになっていた。

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高校生の時には1年生でインターハイ・国体・選抜の全国3冠を達成している。
ボクシングの主要な高校タイトルはこの3つだから1年時から全国最強だったということだ。

強すぎるということで、高校生ながら一般のカテゴリにも参加していて、高校3年時にはアマチュアの全日本選手権に出場してなんと優勝している。
さらにロンドンオリンピック出場を目指してアジア選手権に出場し、決勝まで進むも、世界選手権銅メダリストのカザフスタンの選手に敗れている。もしここで勝っていたらオリンピック選手にもなっていた。

高校生では史上初の7冠を達成し、大学生以上を含めても同じ階級では敵なしの状態でプロ転向を決めている。

プロ転向後

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プロ入りする際に所属する大橋ジムとの契約書に、井上希望で「強い選手と戦う。弱い選手とは戦わない」との条件が付け加えられる。

普通はアマチュアの大物でもプロになって初めて話題になるが、井上の場合はプロテストの時点でちょっとした騒ぎになった。
というのもプロテストの実技試験の相手が、井上の実績が考慮されたことで現役日本王者が選ばれ、しかもそのテストで日本王者を圧倒してしまったのだ。

アマだけでなく、プロでも入った時点で敵なしの状態だった。

プロテストでこれだけやってしまうと、もちろんプロでの試合は勝って当たり前だよね、ということで普通に無傷で勝ち進んでいく。
デビュー戦の相手が東洋太平洋7位の選手だったが難なく下し、4戦目にして田口良一という日本王者に勝って日本タイトルを手にしている。(その田口も今や世界王者として4度防衛している名王者)

そして6戦目にして世界挑戦し、6RKOで世界王者に輝いている。
これは当時日本人最速記録だが、なんか最近は最速記録がインフレしているため抜かれてしまった。

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井上のキャリアからすると世界王者になるのは当たり前に思われがちだが、実はこの試合がキャリアで一番危ない試合だった。

それは厳しい減量によってコンディションが悪く、試合中に足をつって動けなくなってしまったからだ。
井上自身も負けを覚悟して、決死の思いでラッシュを仕掛けてKO勝利を収めているが、それでダメならタオルが投げられていた可能性が高いらしい。

なんにせよ、キャリアに傷がつかなくて幸いだった。

世界の井上へ

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そして日本ボクシング史に残る試合が訪れた。

井上尚弥は8戦目にして、階級を一気に2つあげて、飛び級でスーパーフライ級の世界王者に挑戦することになる。
フジテレビからプッシュされているだけに、さほど強くない相手になるんじゃないのかと猜疑心もあったのだが、その相手はなんとアルゼンチンの英雄、オマール・ナルバエスだった。

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ナルバエスなんて知らないよ、いう人も多いはずなので説明すると、このおじさんがナルバエスだ。

この人はただのおじさんではなく、フライ級の世界王座を16度防衛、スーパーフライ級の王座も11度防衛しているスーパー王者。
敗戦は一度のみで、世界的なスターであるノニト・ドネアに一階級上のバンタム級で負けただけという超強いボクサーである。

そしてフラグを立てておくと、ナルバエスは20年間プロ・アマ通じて1度もダウンしたことがないという男だ。

そう、勘の良い読者ならお気付きの通り、井上はこのナルバエスを一方的にボコボコにしてKOしてしまう。

1R開始わずか27秒で井上は右フックで、ナルバエスから生涯初のダウンを奪うと、その30秒後にさらにもう一つのダウンを奪う。
その後も井上が攻め立てると、2Rに漫画でも見られないような余りにも鮮やかなボディーブローが入り、ナルバエスがたまらずダウン。

ダメージも深かったが、それ以上にナルバエスは心を折られてしまい、立ち上がることなくKO勝利を収めた。

余りにも強すぎるがあまりナルバエス陣営は試合後に、井上のグローブに鉛でも埋め込んでいるに違いないと見て、グローブをチェックするくらい異常な強さだった。(これは実話)
この試合はYouTubeを通じて世界中のボクシング関係者に見られ、様々な海外メディアから世界を含めて年間最優秀ボクサー、年間最高試合に選ばれることになる。

ちなみにこの試合で拳を脱臼し、1年間の休養を挟んだ後に、9ヶ月で3度の防衛戦を行い、当然のように全て圧勝で防衛を果たしている。
どれも「怪物」の名にふさわしい勝ち方だったのだが、ナルバエス戦が余りにも凄すぎたので、こちらは割愛させて頂く。

2016年末に河野公平からKO勝利

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2016年末に4度目の防衛戦として、日本人の河野公平との試合に臨んでいる。
河野は格下と見られている選手だが、「リトルブルドーザー」との異名を持つほどタフで絶対に引かない激戦型のファイターで、決しておいしくはない相手だと言われていた。

試合は序盤から井上がスピードとパンチのキレで優勢に進めるも、河野の止まらない前進と、絶え間なく飛んでくる右ストレートに手を焼く場面もあった。
河野の左右のパンチがクリーンヒットするなど、これまでになく危うい展開となったが、好機と見るや右のパンチを放って飛び込んできた河野に、左フックのカウンターを井上が鮮やかに決めると河野は大の字に倒れる。

なんとかカウント9で立ち上がった河野だったが、ダメージは深く、井上が追撃すると、たちまちレフェリーがストップし、見事なKO劇で4度目の防衛に成功した。

河野はプロ16年目、キャリア43戦にして初のKO負けとなっており、いかに井上の攻撃力が並外れたものかが分かる試合だった。

海外での評価

子供の頃はボクシングの世界王者と聞くと、「世界で一番強いなんて凄い」と胸踊らせたものだが、いざ年を取って冷静に考えてみると、50キロほどの体重の人は欧米人ではほとんどいないことに気づいた。
実際には60kgくらいでないと世界的には選手層が薄いこともあって、世界戦といえどもあまり見向きされていない。

もちろん軽量級でも並外れた選手であるノニト・ドネアやローマン・ゴンサレスらは注目されているが、過去の軽量級の日本人ボクサーは、海外ではマニアであっても名前すら知らないことがほとんどだ。
その他にも日本人選手は海外でほとんど試合をしないし、試合したところで尽く負けてきたという背景もあるが。

だが、井上の場合はナルバエスを衝撃的なKOをした試合が、YouTubeなどを通じて「あのナルバエスを破ったアジア人がいるらしい」という形で知られるようになり、海外メディアから日本人選手としては異例の高い評価を受けている。

パウンド・フォー・パウンドにランク入り

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格闘技には「パウンド・フォー・パウンド」という言葉がある。

これは"格闘技って階級ありすぎて実際誰が強いか分からないから、階級関係なく強いやつ決めよう"という架空のランキングなのだが、ボクシングのように生物的な強さがあるスポーツだけあってこの架空ランキングが一定の権威をもっている。

特にアメリカの権威ある雑誌でのランキングは並の世界王者よりも価値があるものになっているのだが、そのランキングで2016年4月時点で井上は9位に選ばれている。

これは日本人初の快挙だ、と言いたいところなのだが、実際にはそうではなく、山中慎介、内山高志に次ぐ3人目となっている。
いずれも現役バリバリの選手で、日本人選手が最近世界的に評価されているのがわかる。

この記事を書いている時点では山中慎介のみがランキングしているが、スーパーフライ級のみのランキングでは、なんとパウンド・フォー・パウンド1位のローマン・ゴンサレスを抑えて、井上が1位になっていることに注目してほしい。(上の画像参照)

つまり井上は日本だけが凄いと賞賛しているのではなく、世界的に評価されているボクサーの一人でもある。

選手としての特徴

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井上の最大の武器は何と言っても日本人離れしたパンチ力と、規格外のスピードだろう。
ボクサーにとって最も重要なこの2つの基礎能力がズバ抜けて高い。

そのパンチ力を物語るエピソードとしては、上で紹介したエルバエス戦のあとに、陣営から「鉛でも入れてるんじゃないのか」とグローブチェックをされたことが挙げられる。

さらにスパーリングでも14オンスの試合よりも大きなグローブを装着しているにも関わらず、これでもかと相手をダウンさせてしまうらしい。
2016年には国内のアマ・プロのトップ選手を集めて110ラウンドのスパーリングを行ったが、その中で二桁以上のダウンを奪ってきたのだとか。

3階級上のフェザー級5位の渡邉卓也は、井上のボディーブローを腕でブロックした時に骨折してしまったという規格外のエピソードもある。

もっともそれは諸刃の剣となっていて、最近の井上は試合中に拳を壊してしまうことが常態化し、しばしば右手が使えずに左手だけで戦わなくてはならなくなっている。
今はまだそれでも勝ってはいるが、下で紹介しているロマゴンのような強者と対戦した時にはそれが不安要素になるだろう。

ローマン・ゴンサレス戦は実現するのか

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井上尚弥を語る上で、欠かせないボクサーが一人いる。
それはこのローマン・ゴンサレスだ。(右のおじいさんじゃなくて左の人だよ)

素朴な顔をしていて、別に体も筋骨隆々でもないし、よくいるジャパンマネーで連れてこられた外国人選手っぽく見えるが、こいつが実はとんでもないボクサーだ。

戦績はなんと46戦46勝38KO。軽量級で、しかも世界戦をたくさんこなしているのに8割以上のKO率という化物だ。

先程紹介したパウンド・フォー・パウンドのランキングでも並み居る強豪を抑えて1位にランク入りしている、地上最強の生物と言ってもいい。
上の画像で並んでいた日本人ボクサーもボコボコにされてしまった。

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この選手は八重樫東といって3階級制覇を達成した凄いボクサーなのだが、そんな男でもロマゴンが相手では全く歯が立たなかった。

ところでこのロマゴンは強すぎて相手が逃げてしまうことでも知られていて、井岡一翔もこのロマゴンから逃げている。

一応、井岡の名誉のために補足しておくと、逃げたのは事実だが、それが間違った判断ではない。それについてはいつか井岡の紹介記事を書いた時にでも説明したいと思う。

ちょっと前置きが長くなってしまったが、そんなロマゴンを唯一倒せると言われているのが、井上尚弥であり、そして井上もロマゴン戦を熱望している。

2016年に実現するのではないかと言われていたが、結局実現せず、今は2017年にアメリカでやるのか?とも言われている。
こういう話は延び延びになって一生決まらないこともあるが、まあ現実味があるのは確かだ。

決まれば当然ビッグイベントになるし、もし勝つことがあれば日本のボクシング史に間違いなく刻み込まれるだろう。

まとめ

これまでの日本人王者というのは上手いけどパンチ力はない、あるいは上手くはないけど激戦型、みたいにどちらかに特化しがちだったのが、ここのところ山中慎介にせよ、内山高志にせよ、この井上尚弥にもせよ、全ての能力が高水準というボクサーが出てきている。

上に挙げた選手はどれもハードパンチャーで、強豪外国人も一発で仕留める威力があるのが魅力的だ。

井上はハードパンチャー特有の拳の怪我が慢性化していて、最近では左手一本で戦わなくてはならない試合も多く見られる。
最大の不安要素はこの「ガラスの拳」で、ロマゴン戦がもし実現するとなれば、両手を使えなくては互角に戦うことはできないだろう。

井上はこういった怪我や減量苦もあって、まだ潜在能力をフルに発揮した試合というのは意外に少ない。
ナルバエス戦のようにコンディションが整った状態で、ロマゴンと戦えば井上の底が初めて明らかになり、ロマゴンに初めて土をつける人間となるかもしれない。