フィギュアスケートの採点についてなるべく分かりやすく、詳しく解説。

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どうも、ゴトーだ。

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俺は三度の飯よりフィギュアスケートが好きでな。
グランプリシリーズ全てとは言わないが、日本人選手のスケーティングはよくチェックしている。

さて今回は複雑すぎてよく分からないと言われるフィギュアスケートの採点について詳しく説明していきたい。
なるべく筋道立てて分かりやすく解説しているので、興味があればぜひ読んでみて欲しい。

フィギュアスケートの採点について

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(出典: http://www.asahi.com/articles/ASHDF21DBHDFUEHF005.html)

フィギュアスケートは日本では国民的な関心が高く、NHKやグランプリファイナル、世界選手権といった注目大会になるとゴールデンタイムで中継され、軒並み好視聴率を記録している。

しかしそれほど関心が高いにも関わらず、採点に関しては難しくて分からないという声が強く、実際に球技など他競技と比べると得点の付け方が非常に複雑なものとなっている。

フィギュアの採点はなるべく客観性をもたせようと改定されたものの、それでもやはり主観が入らざるを得ないので、ネット上ではそれに対する批判の声も大きい。
具体的にどのように得点がつけられているのか、そしてなぜ恣意的だと言われるのか、そのあたりを理解してもらえればと考えている。

なるべく自分なりに分かりやすくまとめたつもりではいるが、それでもかなり複雑なので、ちゃんと頭を働かせて読まないと理解しづらいかと思うのでご注意を。

ちなみにフィギュアにはシングルだけでなく、ペア、アイスダンスもあるが、この記事ではシングルのみを対象としている。

採点の大前提

まずフィギュアスケートはショートプログラム(ショート)と、フリースケーティング(フリー)の2種目が行われるが、どちらも独立して採点され、その合計得点によって順位が付けられる。

その二つの種目の採点は原則として同じルールが適用されるが、ショートではジャンプとスピンが規定されているのに対して、フリーでは自由に構成できるものの、一定の制限がかけられている。
さらに演技構成点(これは後に説明する)にかけられる比重が異なるなど、細部で異なる点があるので、余計にややこしくなっている。

では採点はどのようにして行われるのかというと、『得点 = 技術点 + 演技構成点 - 減点』となっている。
(※厳密には「+ 減点(マイナス点)」だが、直感的に分かりづらいのであえて「- 減点」にしている)

ここが大前提となるので、これ以降を読み進める時も「得点 = 技術点 + 演技構成点 - 減点」は覚えておいてほしい。

ちなみにどれも多少は恣意的な要素が加わってくるのだが、最も主観によるのが「演技構成点」で、「技術点」と「減点」はある程度客観的に算出することができる。

ここまでのまとめ

  • ショートとフリーは原則として同じように採点するが、細部で異なる点がある
  • 得点は「技術点 + 演技構成点 - 減点」となっている

余談: ショートとフリーの違いは?

ここは余談なので読み飛ばしてもらっても構わない。
ショートとフリーの違いを大まかにいうと「演技時間が違うこと」「飛べるジャンプに規定があるかどうか」の2点。

演技時間はショートは男女とも2分30秒~2分50秒、フリーは男子が4分20~40秒、女子が3分50~4分10秒となっている。

ジャンプはショートの場合、規定された7つのジャンプとスピンをこなし(男女で異なる)、フリーでは一定の制限のもとに得点が最大になるように自由に構成できる。

フリーのほうがジャンプなどの加点をたくさんこなせる上に、演技構成点というものがショートよりも2倍入るので、ショートよりもフリーの得点の比重が大きくなっている。

技術点について

それでは「得点 = 技術点 + 演技構成点 - 減点」のうち、技術点の部分にフォーカスして説明したい。
細部を詰めていくと、全体像が忘れがちだが、ここから先はあくまで得点の一部である技術点の説明だということを踏まえておいてほしい。

技術点とは何か

技術点とは何かというと、「ジャンプ」「スピン」「ステップシークエンス(ステップのこと)」の3つから、競技者が行った技に応じて加点される点数のこと。
(※女子はスパイラルシークエンスが加わると書かれている記事もあるが現在は廃止されている)

そしてこの採点対象の技のことを、要素(エレメンツ)と呼ぶ。

例えば「4回転ジャンプを成功させると高得点」というのは、技術点のうちのジャンプに大きく加点がつく、ということになる。
基本的には難しい技をキレイに決めるほど点数が高くなる、という認識で良い。

そして技術点は「基礎点」と「GOE」という二つの要素によって評価される。

基礎点とは

基礎点とはその名の通り、行った要素につけられる基本的な点数のこと。
もちろんこれはジャンプだけなく、スピンやステップにも適用される。

どの要素にどれだけの基礎点が入るかというのは規定されており、例えばトリプルアクセルなら8.5、4回転トウループなら10.3、4回転ルッツなら13.6という具合。
同じ回転のジャンプでもトゥループとかルッツといった種類によって得点が結構変わってくる。

ちなみに選手が行った要素が何であったのかは、技術審判がスロー再生で確認して判定している。

後半ボーナス

ちなみに基礎点は演技の後半に行うと1.1倍になる、というルールがある。

例えば4分間演技を行ったとすれば、後半2分以降に行ったジャンプなどの要素の基礎点は1.1倍となる。
(ちなみにショート、フリーとも演技時間は±10秒ずれても良いので、厳密に何分何秒からというのは選手によって異なる)

GOEとは

GOEとは「Grade of Execution」の略称で、それぞれの要素がどれだけの出来だったかを評価するもの。

算出されたGOEは基礎点に影響を与え、より良い出来栄えものは基礎点にプラスされ、悪いものはマイナスとなる。

GOEは「-3~3までの7段階」で最大9人の演技審判によって付けられるが、要素ごとにどうだったらこれくらいのGOEになるという規定が存在する。
(ちなみにマイナス評価に関しては具体的に定められているものの、プラス評価に関しては抽象的となっているらしい)

複数の演技審判によってGOEがつけられるが、公正を期すために最高と最低の点数を除き、残った点数の平均点が最終的なGOEになる。

しかしここでややこしいのが、GOEが仮に「+2.5」だったとしても、基礎点にそのまま2.5点が加わるわけではない。
要素ごとにあらかじめGOEによる加点と減点が決められており、それに基づいて基礎点に影響を及ぼすことになる。

例えばトリプルアクセルの場合、GOEは「-1」ごとに-1点となっているが、4回転ジャンプの場合、GOEは「-1」ごとに-1.2点となっている。

加えて、GOEはプラスの時とマイナスの時で異なることがあり、4回転ジャンプは「-1」ごとに-1.2点であるが、プラスの場合は「1」ごとに1点の加点となる。

算出方法

ここまで紹介してきた手順によって算出することになるが、改めて順序だてて説明すると以下のようになる。

  1. 技術審判がスロー再生をして、選手がどの要素を実行したのかを判定。この時点で基礎点が決まることになる。
  2. 演技審判がそれぞれの要素にGOE(出来栄え)を7段階でつける。
  3. 最高と最低の点数を除き、残った平均値が最終的なGOEとなる。
  4. 要素に応じてGOEの影響を割り出し、それを基礎点に加える。

選手がプログラムの中で行った要素を一つ一つ以上の手順によって算出し、それを合計したものが技術点となる。

制約もある

基本的は上記のとおりに技術点がつけられるが、一方で選手が決められた時間内にやたらめったらジャンプをしまくっていたらまともな競技にならないので、ジャンプやスピンには実行できる上限が設定されている。

これは細かく説明すると全体像が分かりづらくなってしまうので、一旦飛ばして最後に振り返ることにしよう。

まとめ

  • 技術点はジャンプやスピン、ステップといった要素につけられる
  • それがどの要素であるかは技術審判がスロー再生で判定する
  • 演技審判によってGOEがつけられ、要素の得点が割り出される
  • その合計得点が技術点になる

演技構成点について

さて、これまで技術点について解説してきたが、ここからは構成点について説明したい。
改めて前提をおさらいすると「得点 = 技術点 + 演技構成点 - 減点」なので、構成点は得点の一部に当たる。

演技構成点とは何か

演技構成点とは「プログラムコンポーネンツスコア(PCS)」「ファイブコンポーネンツ」と呼ばれることもあり、演技審判(最大9人)が5つの項目を10点満点で、0.25点刻みで採点するもの。
技術点の時と同様に、最高点と最低点を除いて、残った点数を平均したものが有効な点数となる。

5つの項目はそれぞれ加点されて、その合計点に係数をかけたものが最終的な演技構成点。
男女のショート、フリーによって係数は異なっており、その値は以下のようになっている。

種目 係数
男子ショート 1.0
男子フリー 2.0
女子ショート 0.8
女子フリー 1.6

なぜ男女で、しかもショートとフリーによって異なっているのかというと、演技構成点は技術点と大体同じくらいになるように設定されているため。

フリーの方が演技時間が長くて、飛ぶジャンプの数が多かったり、男子のほうがトリプルアクセルや4回転ジャンプといった基礎点の高い要素を組み込んでいることが要因となっている。

5つの項目

演技構成点の元となる5つの項目は、「スケーティング技術」「要素のつなぎ」「動作/身のこなし」「振り付け/構成」「音楽の解釈」となっている。
それぞれどのようなものか紹介していこう。

スケーティング技術

演技構成点のうち最もベースとなる技術のこと。

エッジをどのように使っているか、演技のスピードや加速、カーブを綺麗にコントロールできているか、色んな方向にスケーティングできているか、片足でのスケーティングの精度が高いかどうかなどが評価対象となる。

要素のつなぎ

その名の通り、ジャンプやスピンなど要素と要素の間を評価するもの。

複雑なフットワーク、ポジション、動作をしているか、それらに多様性があるかどうか、どれだけ難しいかなどが評価対象となる。

動作/身のこなし

これはいわゆる「演技力」に当たるもの。

肉体をどれだけ情熱的に、知的に動かしているか、個性がどれだけ発揮できているか、多様性がありそれらにコントラストが加わっているかなどが評価対象となる。

振り付け/構成

振り付けがいかに素晴らしいかではなく、空間全体をどのように統一性をもって動いたかを評価する。

全体の中でバランスされているかどうか、360度あらゆる角度を活用できているか、オリジナリティがあるかどうか、プログラムの難易度や創造性などが評価対象となる。

音楽の解釈

動作が音楽に投影されたものであるかどうかを評価する。

音楽のリズムやハーモニーを表現できているか、テンポが適切かどうか、音楽のニュアンスを投影できているかどうかなどが評価対象となる。

採点

以上の5項目それぞれ10点満点で採点され、その合計得点に係数をかけたものが演技構成点となる。

例えば男子のフリーで、5項目の合計が45点だった場合、係数が「2」なので90点になる。
もし女子で同じ採点だったとしても、係数が「1.6」なので、72点になる。

恣意的だという批判

ジャンプの基礎点のように客観的に「これは何点」と明確に定めることができなくて、審判の主観が入っているのではないか、と批判される事も少なくない。

もっとも完全に主観で決めるのではなく、上でザックリと紹介したようにそれぞれに定義があり、どのように採点するのかの基準は設けられている。
それでも、どうしても人によってバラつきが出てしまうのは確かであり、フィギュアの採点の難しさを最も表している指標でもある。

まとめ

  • 演技構成点は5つの項目からなる
  • それぞれの項目は10点満点でつけられ、合計点を係数で乗算する(技術点と同じくらいにするため)
  • 採点基準はあるものの、定量化できないので恣意的だという批判もある

減点について

それでは最後に減点について説明したい。
「得点 = 技術点 + 演技構成点 - 減点」なので、ここまでを抑えれば大方スコアについて理解したことになる。

減点の付け方

減点はディダクションというのが正式名称で、違反行為をすると技術審判によって判定され、それぞれ規定の得点が引かれることになる。
代表的な違反行為は以下の通り。(これが全てではない)

  • 転倒…1度目と2度目は1回につき-1点、3度目と4度目は1回につき-2点、5度目以降は1回につき-3点
  • 時間超過または不足…演技時間は±10秒が許容されているが、それを超える過不足は5秒おきに-1点
  • 禁止技…バックフリップ(バック宙)などの技は禁止されており、1つにつき-2点
  • 衣装の違反…小道具の使用などに違反があれば-1点
  • 10秒以上の中断…10秒につき-1点
転倒について

実は転倒してもそれ自体は違反行為にはならず、「エッジ以外の部分で大部分の体重がかかる」と違反になる。

例えば軽く両手を付いてしまってもエッジに体重が残っていれば、転倒扱いにならず、出来栄えのGOEが下がるだけで済むことが多い。

最後に全ての点数を集計

ここまで来たら最後は点数を集計すれば良い。

ジャンプやスピン、ステップによる基礎点と、5つの項目からなる演技構成点と、転倒などの違反による減点を全て合算する。
何も難しいことはなく、例えば技術点が80点、演技構成点が70点、減点が10点なら、「80 + 70 - 10」で140点がその選手の最終的な採点結果となる。

採点の大まかな原理についてはここまでで以上となるが、より具体的なルールについて説明を省略した箇所があるので、引き続き説明を続けていこう。

追加の説明

ジャンプなどの「要素」の無効要素

ジャンプやスピンといった技術点のもとになる要素を回数制限なく実行できたら、とにかくジャンプして基礎点を稼ぐという形になってしまうので上限が設定されている。
また、同じ種類のジャンプを飛べる回数も細かく定められている。

ちなみにショートでは実行するジャンプやスピンは規定されているので、フリーだけのルール、両方のルールどちらも存在する。

ショート、フリー共通のルール
  • 二回転の同じ回転、同じ種類のジャンプは二度目までしか挑戦できない。(a)
  • 三回転以上の同じ回転、同じ種類のジャンプは二種類を二度までしか挑戦できない。(b)
    • さらに少なくとも一つはコンビネーションまたはシークエンスにしなければならない。
  • 採点表で同じ略記で書かれるスピンは一度しか行えない
  • コンビネーションスピンは最低10回転、それ以外は最低6回転が必要
フリーのみのルール
  • ジャンプは男子は最大8回、女子は最大7回挑戦できるが、1つのアクセルジャンプを含まなくてはならない。(アクセルとは前向きに踏み切るジャンプで半回転加わるので難しいとされる)
  • スピンは男女ともに最大3回挑戦できる。
  • コンビネーションジャンプとシークエンスジャンプは合わせて最大3回まで挑戦できる。
    • 一連のジャンプは一つのジャンプとみなすことができる
    • 1つのコンビネーションジャンプは最大3個までのジャンプまで、残りの2回は最大2個まで。

このように列挙したものの、どういうことか分からないという方も多いと思うので、分かりづらいものには補足を入れていきたい。

違反した場合

例えば「採点表で同じ略記で書かれるスピンは一度しか行えない」とあるが、二度行ってしまった場合、二度目の要素の得点がゼロになる。(例外あり)
これはジャンプ、スピン共通で、ゼロになるものの減点にはならない。

ジャンプの種類について

「二回転の同じ回転、同じ種類の…」とあるうちの「種類」とは何かというと、アクセルやサルコウといった何となく聞き覚えのある名称のものだ。

これらはジャンプの踏み切りが違っていて、それによって難易度が異なっているので基礎点も異なるのだが、同じ回転のものは良くても同じ種類ものは二度までしか挑戦できない。

コンビネーションとシークエンス
  • コンビネーションジャンプ…着氷した足で続けて次のジャンプを跳ぶこと
  • シークエンスジャンプ…ジャンプからジャンプの間をホップやジャンプによってつなげて跳ぶもの

コンビネーションは基礎点がそのまま加算される一方で、シークエンスは加算した基礎点の80%が得点となる。

ちなみに三回転以上の単独のジャンプを2度続けて跳んでしまうと、「REP」(繰り返し)という表記がついて、この場合は基礎点の70%が得点になる。
これを防ぐには、どちらかのジャンプをコンビネーションかシークエンスにしなくてはならない。

ザヤックルールとは?

よくフィギュア界隈では「ザヤる」と表現することがあるが、ザヤックルールに違反することを言う。
これは一覧で挙げた無効要素のうち(a)と(b)に当たる。

  • 二回転の同じ回転、同じ種類のジャンプは二度目までしか挑戦できない。
  • 三回転以上の同じ回転、同じ種類のジャンプは二種類を二度までしか挑戦できない。

エレイン・ザヤックという女性選手が、演技中に4度に渡って三回転トゥループを跳んで優勝したために、同じ種類のジャンプに対する制限が設けられるようになった。
もっとも「ザヤる」も「ザヤックルール」も正式名称としてあるわけではなく、フィギュアファンの中で定着した名称である。

ちなみに、織田信成がザヤックルールに違反することが何度もあったために、「オダる」と皮肉で言われることもある。

「 転倒 = ジャンプの失敗」ではない

ちなみに転倒したらジャンプが失敗したとみなされると誤解されがちだが、その通りではない。

例えば4回転トゥループに挑戦して、回転は十分な状態で尻もちをついても、4回転の基礎点はそのまま貰える。

その場合、出来栄えのGOEに-3(-4点)、転倒での-1点がつくが、「(基礎点)10.3 - (GOE) 4.0 - (転倒) 1.0」となり5.3点が入る。
これは3回転トゥループをGOE1で成功させるよりも高得点になっている。

最後に

フィギュアは人気競技にも関わらず、採点の難しさや分かりづらさのために、今でも採点についての理解があまり進んでいない。

またルールも頻繁に変わっており、古いルールのまま記載されているメディアも見かけるので、そのまま覚えてしまっている人もいるかもしれない。

採点方式が分かったからといって、フィギュアが楽しく見れるのかというと必ずしもそうではないかもしれないが、皆さんの疑問に応えられる形になっていれば幸いだ。

(※はてなブックマークでのコメントを受けて一部内容を修正しました。ご指摘ありがとうございます。)