バダ・ハリ試練のリコ・ヴァーホーベン戦は肩の脱臼で敗北!GLORY COLLISIONのタイトルマッチの詳細レポート。

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かつてK-1を騒がせたスター選手、バダ・ハリの現在をご存知でしょうか?実はバダ・ハリはK-1消滅以降、プライベートでの素行不良で度々メディアを騒がせています。

そのバダ・ハリが日本時間12月11日(日)にリコ・ヴァーホーベンと対戦します。

リコ・ヴァーホーベンはそのK-1消滅以降に台頭してきた選手で、現在立ち技で世界最強と言われています。もしもK-1がまだ続いていたのならリコは間違いなく日本でも高い知名度を誇るスター選手になっていたでしょう。

日本の立ち技格闘技は新生K-1などの新しい風が吹いていますが、旧K-1の流れを汲むのは新生K-1ではなく、この両者の対戦が行われるGLORYにあります。GLORYの紹介とともに、この試合の見所を紹介していきます。

GLORYとは

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この二人の試合はGLORYという団体で行われるのですが、まずはGLORYがどのような団体なのかを説明します。

90年代~00年代にかけて立ち技格闘技の世界の中心はK-1でした。日本のテレビ局と観客動員力によって豊富な資金力を持ち、メジャー舞台のなかったキックボクシングにおいて唯一のメジャー団体として世界を席巻しました。しかしK-1が資金難で消滅したことを受けて、それを置き換えるような形で成り上がったのがGLORYです。

GLORYといえばかつてK-1に有力選手を多く輩出していた「ゴールデン・グローリー」のジムが前身となっていますが、現在の運営母体は全く異なります。ゴールデン・グローリーの代表だったバス・ブーンはもともとK-1を買収しようとしていたのですが、それに失敗。それを受けて、投資家から多額の資金調達を受けて、また何人かのキーパーソンを加えてシンガポールに運営団体を立ち上げたのが実質的な始まりとなっています。

GLORYは当初、K-1を買収していただけあって、K-1の手法をそのまま活かすような形で大会を開催。ほどなくしてK-1と協力関係を結んでいた大手団体のIT'S SHOWTIMEを買収し、また日本で風前の灯になっていたメジャーMMA団体のDREAMも買収するなど、積極的な拡大路線を取り始めます。

K-1の人気選手であるグーカン・サキ、ピーター・アーツ、セーム・シュルト、バダ・ハリらと次々と契約を交わし、まるでK-1グランプリのような大会を2011年、日本の大晦日に開催しています。その後も、ピーター・アーツの日本引退試合を日本で開催するなど、日本市場を本格的に狙い続けました。

しかし日本市場は格闘技ブームが去ったことで非常に冷え込んでいたことから、市場をアジアやアメリカに移し2013年にはアメリカで4度大会を開催しています。アメリカといえばUFCやBellatorを始めとした総合格闘技と、歴史のあるボクシングが盛んで、キックボクシングはローカルスポーツに過ぎませんでしたが、GLORYはアメリカ市場を今も開拓しようとしています。

UFC、Bellator、またTUFを放送しているアメリカのテレビ局SpikeTVと契約を結び、ゴールデンタイムでの放送が行われているほか、UFCのストリーミングサービスであるUFCファイトパスに放映権を売っていることで、ファイトパスに加入すればGLORYの試合を見ることができます。

キックボクシングの競技人口の多くはヨーロッパに偏っているため、やはり開催地は欧州が中心となっているものの、アメリカ市場への貪欲さを失うことなく、2016年には10度の興行のうち5度がアメリカでの開催となっています。(ちなみに今回バダ・ハリとリコ・ヴァーホーベンの試合が行われる「GLORY COLLISION」はドイツ開催となっています。)

日本市場を見限ってしまったことは残念ではありますが、日本では現在、新生K-1や先日旗揚げされたKNOCK OUTなど、旧K-1とは異なるベクトルの新しいイベントも開催されています。

GLORY COLLISION開催概要

さてバダ・ハリとリコ・ヴァーホーベンが対戦するGLORY COLLISIONの開催概要を紹介します。

GLORY COLLISIONはドイツのケーニッヒ・ピルスナー・アリーナで開催されます。ケーニッヒ・ピルスナー・アリーナは収容人数12650人の会場で、普段は音楽やスポーツイベントが開催されているようです。

開催日時は現地時間12月10日となっています。ウェブサイトを見ると、現地時間22時からの開始となっていますが、これはPPVカードの開始時間なのかもしれません。もしそうだとすると、日本時間では12月11日(日)の午前6時からPPVカードが開始されることになります。

公式サイトの情報がとても少なく、PPVカードの4試合しか掲載されていませんが、この他にも「メインカード」「スーパーファイト」も行われ、3部構成となっているようです。PPVカードの4試合に関してはUFCファイトパスのPPVから購入することができるようです。

www.glorykickboxing.com

スーパーファイト

ライトヘビー級 ダニョ・イルンガ vsマイケル・ドゥート
ウェルター級 ハルト・グレゴリアンvs ダニエル・ソラジャ
ライト級 アンドレ・ブルーリュ vs Tyjani Beztati
女子スーパーバンタム級 ティファニー・バン・ゾースト vs ジェシカ・グラッドストーン
女子スーパーバンタム級 Isis Verbeek vs アメル・デービー

メインカード

ライト級 シッティチャイ・シッソンピーノン vs マラット・グレゴリアン
フェザー級 モサブ・アムラーニ vs ファビオ・ピンカ
ライト級 ヒスニ・ベキリ vs ヨドフンポン・シトモンチャイ
ライト級 ディラン・サルバドール vs アナトリー・モイゼフ

PPVカード

ヘビー級 リコ・ヴァーホーヴェン vs バダ・ハリ
ヘビー級 イスマエル・ロント vs ジャマール・ベンサディック
ウェルター級 ニキー・ホルツケン vs セドリック・ダム

バダ・ハリの紹介

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バダ・ハリはK-1の後期に一世を風靡したスター選手です。母国オランダやK-1が開催されていた日本だけでなく、世界的に高い知名度を誇るキックボクサーで、出身のモロッコでは英雄的な使いを受けています。1984年生まれのバダ・ハリは今は32歳のベテラン選手でもあります。

バダ・ハリがK-1にデビューしたのは2005年のことで、当時20歳ながらK-1で高い実績を誇るステファン・レコから衝撃的なKO勝利を収めるセンセーショナルなデビューとなりました。この試合を機にバダ・ハリは次世代のスター選手として大々的に押し出され、当初はあまり結果が出なかったのですが、辛抱強く起用されたことで、やがて才能が開花していきます。

肉体的な成長が著しく、それと共にファイトスタイルを変化させ、技巧派から相手を飲みこむパワーファイトを武器とするようになります。2006年に主催者推薦で出場したK-1世界大会では初戦敗退となりましたが、翌年はベスト8、その次の年には準優勝に輝き、一気にスターダムにのし上がります。2009年は優勝候補にあげられていましたが、決勝でセーム・シュルトに敗れて2年連続の準優勝。翌年こそリベンジを誓いますが、モチベーションの低下を理由に欠場。

しかしK-1がこの年を最後に消滅したことから、バダ・ハリはモチベーションや金銭的な問題から、2011年のグーカン・サキ戦をもって一度は引退を発表し、ボクシングへの転向を発表します。これをもってボクシングへの本格参戦が予想されましたが、それを僅か4ヶ月で覆します。

もともとバダ・ハリがK-1末期に欠場していたのは、K-1が資金難からファイトマネーの未払いが横行しており、バダ・ハリにもファイトマネーが支払われていなかったことが原因だとされています。未払い状態にあった旧K-1は消滅しましたが、K-1の商標は存在しており、運営元をFEGから「K-1グローバルホールディングス」に変わったことで、ファイトマネーが支払われるだろうということで、再びバダ・ハリはK-1に参戦することになったのです。

バダ・ハリの復活を誰もが喜びましたが、残念ながらバダ・ハリはパフォーマンスがモチベーションに左右されやすいこともあって、旧K-1時代のような唸るようなファイトは見られなくなっていました。それと同時にプライベートでの悪行が次々と露わになってきます。

2012年7月にはオランダのアムステルダムで、実業家の男性に「地獄へ落ちろ」と怒鳴りながら足首を何度も踏みつけて粉砕骨折、さらに頭部を殴って骨折させたことで、殺人未遂容疑で逮捕。翌日にはサッカー元オランダ代表のレジェンド、ルート・フリットの妻と不倫関係にありながら海外にバカンスに出かけていたことも批判材料となりました。
さらにこの事件をキッカケに前年にはナイトクラブのオーナーに暴行を振るって重症を負わせていたことなどが次々と明るみに出て、暴行殺人未遂罪と放火罪の合計6件の容疑で逮捕されています。

これ以降、さらにバダ・ハリのパフォーマンスは低迷を極め、2013年の5月には過去2度勝利しているザビット・サメドフからKO負け。この時にはバダ・ハリはもう終わった選手だと見られていました。

ただしそこからは徐々にパフォーマンスを戻しつつあり、アレクセイ・イグナショフ、ステーファン・レコ、ピーター・グラハムといったK-1のレジェンド選手を撃破し、直近では勢いに乗っていたイスマエル・ロントからダウンの応酬の末にKO勝利を収めています。

素行不良

バダ・ハリの最も危ういところであり、同時に魅力的でもあるのは、稀に見ぬ素行不良の選手であるということです。横暴なイメージのある格闘家ですが、その実パフォーマンスでやっていることが少なくない中、バダ・ハリは母国オランダで高い知名度を持ちながら、これまでに何度も警察沙汰になってきました。

2005年12月には当時バダ・ハリが所属していたIT'S SHOWTIMEのプロモーターの妻がストーカー被害を受けているという際に、そのストーカーの自宅のドアを蹴破って侵入し、そのストーカーに暴行した容疑で4週間の拘置となっています。

また2008年にはバダ・ハリと肉体関係を持った女性の自宅に友人とともに放火する事件を起こし、警察から事情聴取を受けています。

さらに2010年にはナイトクラブでドアマンに集団暴行し、失明する可能性もあるほどの重症を負わせ、後にそのドアマンに接触した際に、それを口外しないように口止め料を支払っていたことも明らかになっています。2012年には先ほど紹介したように実業家を粉砕骨折させる暴行事件を起こすなど、バダ・ハリのキャリアには常にトラブルがつきまとっていました。

世界的な人気

しかし、そんなトラブルメーカーのバダ・ハリですが、同時に紛れもなくキックボクシング史上でも1,2を争うほどの人気選手です。日本での人気はK-1でもお馴染みですが、母国のオランダではそれ以上にゴシップを賑わせる存在としてさらに存在感が有ります。

さらにバダ・ハリはモロッコ系のオランダ人であるため、ルーツにあたるモロッコでは英雄的な存在でもあります。2008年にはモロッコの国王から「国民栄誉賞」を授与しており、他にも車を賜るなど、国家規模の存在でもあるようです。

レアル・マドリードの選手たちとも交流を持っており、クリスティアーノ・ロナウド、ベンゼマ、マルセロらが応援メッセージをYouTubeに投稿したり、カカやバロテッリも同様のメッセージをFacebookにアップロードしています。

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とりわけクリスティアーノ・ロナウドとはゴシップ誌に同性愛を疑われるほど仲が良く、ロナウドは試合が終わるたびにバダ・ハリのいるところまでプライベートジェットで向かっていたことがチームから問題視されたことでも話題になりました。

リコ・ヴァーホーベンの紹介

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リコ・ヴァーホーベンは日本での知名度はそれほどありませんが、現在立ち技格闘技で世界最強の選手です。Wikipediaではリコ・ベホーベンとなっており、そちらの読み方の方が正しいようですが、「ヴァーホーベン」表記の方が浸透しているため、こちらで紹介しています。

リコは1989年生まれで、現在27歳。K-1には2008年から出場しており、バダ・ハリと同じく20歳でのデビューとなっています。196センチ、114キロという恵まれた体格を活かしたファイトスタイルで将来を嘱望されていましたが、しばらくは体格の割にパワーが不足しており、相手の馬力に押し込まれて敗れることが目立っていました。
旧K-1からも期待されていた選手ですが、2009年に予選で敗れたことを最後に旧K-1では出場機会を失ったため、日本での知名度は高くはありません。

リコが頭角を現したのは2013年からで、まずはK-1ベスト4の実績を持つエロール・ジマーマンから勝利。さらにK-1消滅後の世界最強を決めるGLORYのヘビー級トーナメントでは、当時2強と言われていたグーカン・サキとダニエル・ギタから下馬評を覆しての勝利を収めたことで、一躍リコは世界のトップへ登りつめます。
その勝利も一発で試合を決めるというものではなく、お互いに実力を発揮する激戦の末での勝利だったため、リコの実力を疑う者はほとんどいませんでした。

その年の12月にはピーター・アーツでの日本引退試合の相手を務めて判定勝利。次戦はダニエル・ギタのリベンジマッチの相手を務めますが、ギタの挑戦を退けてヘビー級タイトルの座を守っています。

その後もGLORYでのタイトルマッチでアンダーソン・シウバら強豪選手の挑戦を次々と退けて、GLORYヘビー級タイトルを6度防衛中。そして12月11日に行われるバダ・ハリとの試合はヘビー級タイトルの7度目の防衛戦になります。

ボクシング、総合格闘技への挑戦

もしもK-1がかつてのような人気を維持していたのならば、リコは間違いなくスター選手だったでしょう。ヘビー級タイトルの座を3年にも渡って防衛し続けており、もはや拮抗する相手がいないのではないかと言われるほどの充実ぶりです。

しかしGLORYはアジアやアメリカで市場を広げている最中ですが、それでもやはりかつてのK-1のような栄誉を得るには至っていないのか、現役王者であるにも関わらず、ボクシングと総合格闘技の試合も同時に行っています。もっともどちらも1試合しか行っておらず、今後続けるのかは不透明ではあります。

ボクシングでは2014年4月にヤノス・フィンフェラというハンガリーの選手から2RKO勝利。実はこの選手は6戦6敗と典型的な噛ませ犬だったようです。
総合格闘技では2015年10月にヴィクトル・ボグツキという選手から意外にもテイクダウンを奪ってパウンドでのKO勝利。しかしこの選手も同様に2戦2敗の選手で噛ませ犬のようです。

リコはリコでバダ・ハリとは違って迷走しているようにも見えますが、素行不良は一切なく正統派の人気選手です。

この試合の見所

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この試合、下馬評では圧倒的にリコ・ヴァーホーベンの有利と見られています。

それもそのはずで、先ほども紹介したようにリコは2013年にヘビー級タイトルを手にしてから3年間、6度の防衛に成功しているのに対して、バダ・ハリはここ最近5連勝しているものの、今ひとつパフォーマンスが上がってきていないからです。またバダ・ハリが勝ってきた相手を見ても、ステファン・レコ、アレクセイ・イグナショフ、ピーター・グラハムといった過去の選手ばかりというのも一つの要因でしょう。

バダ・ハリはパフォーマンスが精神状態に影響されやすく、旧K-1のような明確な目標を失い、プライベートでの騒動につられて、一時は見る影もないほどにパフィーマンスを落としていました。最近はやや復調しているものの、盤石のリコを下すほどのものではありません。

唯一の好材料としては、堕ちたスターであるバダ・ハリが最強王者に挑戦するということで、通常大会よりも高い注目を集めており、バダ・ハリのトレーニングも過去最高なほどに充実しているとの話があります。
体格的にはどちらも五分ですが、持って生まれた天性のスピードと、トレーニングによって身につけたパワーはバダ・ハリが上回っており、全盛期の力に戻していれば十分に勝算はあります。

一方のリコはかつてのパワーに押される印象はすっかりなくなり、強豪選手と真っ向ぶつかってもねじ伏せるだけの強さを身に着けています。ボクシングにも挑戦しているようにボクシングテクニックの向上が目覚ましく、固いガードとタイミング良く的確に放たれる右ストレートはキックボクサーとしては頭一つ抜けています。

バダ・ハリがリコを倒し、第2の全盛期を迎えるのか、それともリコがバダ・ハリを下してキックボクシングの頂点であることを証明するのか。
2016年のキックボクシングにおける最大の一戦は12月11日の早朝に行われます。

試合レポート

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この試合は近年のキックボクシングシーンにおいて稀に見ぬ盛り上がりとなりました。
試合前から観客は総立ちで、バダ・ハリコールが立ち込めています。

試合が始まると、バダ・ハリは意外とおとなしくリコの出方を伺いながらジャブやローキックでペースを掴もうとします。
しかしバダ・ハリのスピードやパワーはやはり全盛期から程遠く、心身ともに充実しているリコの固いガードを崩すには至りません。

逆にリコがジワジワとプレッシャーをかけながらバダ・ハリをロープ際まで追い詰めていきます。
離れてはジャブやボディージャブを打ち、ロープに詰めたら右のストレートを打つことで、決定打こそありませんが優勢に試合を進めていきます。

一方でリコはバダ・ハリのパンチでカットしたのか鼻の上から出血するシーンもありつつ、1Rが終了。

2Rになってもバダ・ハリは打開策を見出だせず、下がらされる展開が続きます。
致命打にはつながっていないものの、ロープ際まで詰められたバダ・ハリのガードが甘くなり、リコの右が今にもヒットしそうな様相を呈しています。

リコが首相撲で膝蹴りを放ち、レフェリーがブレイクをかけて再開しようとしたところ、バダ・ハリが戦意を喪失したかのように踵を返してしまいます。
それを見たレフェリーがダウンをコールしたものの、バダ・ハリはついにファイティングポーズを取ることなくコーナーに戻り、レフェリーが試合をストップ。

余りにも不完全燃焼ながら、リコが2RKO勝利を収めて7度目の防衛に成功しました。

どうやらバダ・ハリは首相撲の攻防の際に肩を脱臼したとのこと。
バダ・ハリは「来年、リコをKOする」とマイクでアピールし、リングを後にしました。